2021年03月02日

◆新型コロナ調べ(第2回) 重症者が重症病床を使用する日数が長期化した場合の計算例





前回に引き続き、個人的に関心を持ったテーマ、新型コロナの重症者数の推移について、自作したシミュレーションモデルを使いながら自分なりに理解したことを書いていきます。
医療分野の専門家でもなんでもない個人が作成した自由研究ノートを眺める感じでお読みくださいねヒ・ミ・ツ


《前回と今回のあらすじ》

前回記事「新型コロナ調べ(その1)」では、新型コロナの「1日の感染者数」のデータを元に重症病床使用数の推移を大まかに計算できるような、超簡易なシミュレーションモデルをDIYで作成し、「仮想都市モデルA-a15」と名付けました。

作成した「仮想都市モデルA-a15」では、「1日の感染者数」のうちa=0.15(15%)の人を「重症化しやすい感染者数」と見なして計算を進めています。もしaの値を2倍に設定すると、シミュレーションの結果として得られる「重症病床使用数(重症者が14日間使用する場合)」の値も2倍になることは前回の記事で示しました。

今回は、「仮想都市モデルA-a15」の条件設定のうち、「重症病床使用数(重症者が14日間ベッドを使用する場合)」という部分に変更を加えたモデルを使って、重症病床使用数のシミュレーションを行います。具体的には、重症者がベッドを使用する期間をこれまでは「14日間」と想定していたところを、「21日間」や「28日間」、「35日間」などに変更し、シミュレーション結果がどう変わるかを調べます。


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2 重症者が重症病床を使用する日数が長期化した場合のシミュレーション

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《前回のおさらい》
「仮想都市モデルA-a15」の説明

まず、前回作成した「仮想都市モデルA-a15」を再度説明します。


こむずかしい説明は嫌い、数式とかもあまり考えたくない、という方のために モデルの中身を超簡略化して説明すると・・・・・
仮想都市モデルA-a15では、「1日の感染者数」のうち、0.15の割合(15%)の人は重症化しやすいと見なされますが、実際に重症化するのは、その15%のうちの常に0.10の割合(10%)の感染者です(例外なし!)、そういう仮想都市A-a15があるものと想像してください。また、重症化する人は例外なく、自身が「1日の感染者数」としてカウントされた日の1週間後(7日後)に重症者となり、その日の「新規の重症者数」としてカウントされます。ベッド(重症病床)の使用は「新規の重症者数」とカウントされた当日からすぐに開始し、14日間にわたってベッド(重症病床)を使用します(これも例外なし!)、そういう規則正しい流れが全ての人々に関して完璧に成立しているのが仮想都市A-a15であるとご理解ください。


上の説明をもうちょっと詳細に説明すると・・・・・・

次の(ア)~(オ)の条件が完全に満たされている仮想都市A-a15があるものと想定します。

「1日の感染者数」
(ア)仮想都市A-a15のコロナ感染者は、もれなく「1日の感染者数」としてデータが公表されているものとする。

「重症化しやすい感染者数」
(イ-1)「重症化しやすい感染者数」は、「1日の感染者数」のうち常に0.15の割合(15%)であるとする。
(イ-2)それ以外の残りの0.85(85%)の重症化しにくい感染者は、決して重症化しないものとする。
(イ-3 )計算式は、「重症化しやすい感染者数」=「1日の感染者数」×0.15 となる。

「新規の重症者数」
(ウ-1)「新規の重症者数」は、「重症化しやすい感染者数」のうち常に0.10の割合(10%)であるとする。
(ウ-2)それ以外の残りの0.90の割合(90%)の重症化しやすい感染者は、決して重症化しないものとする。
(ウ-3)「新規の重症者数」としてカウントされるタイミングは、「1日の感染者数」としてカウントされてから、ちょうど7日後であるとする。
(ウ-4)計算式は、「新規の重症者数」=7日前の「重症化しやすい感染者数」×0.10 =7日前の「1日の感染者数」×0.15×0.10 となる。

「重症病床使用数」
(エ-1)「新規の重症者数」にカウントされた人は、重症者とカウントされた当日から重症者となり、重症病床を使用開始するとする。そして、14日間重症病床を使用し、15日目に重症者ではなくなり、重症病床使用を終了するとする。
(エ-2)重症病床は、重症者がベッドを空けた翌日には別の重症者の受け入れが可能な状態になるものとする。
(エ-2)上記の条件により、「仮想都市A-a15」においては、重症者は必ず重症病床を使用していることになる。よって、ある時点における「重症病床使用数」は「重症者の数」と一致する。
  (※「新規の重症者数」と「重症者の数」は異なります。言葉の使い分けに注意!)
   
(オ)仮想都市A-a15では、上記以外には、感染者や重症者は、全く発生しないものとする。


《今回のモデルの変更点》

今回は、上で説明した「仮想都市モデルA-a15」のうち、(エ-1)の条件設定(赤い文字)だけ変更したモデル①~③を作ります。

①重症者は21日間重症病床を使用し、22日目に重症者ではなくなるモデル 
 →仮想都市モデルA-bed21と呼ぶことにします。
②重症者は28日間重症病床を使用し、29日目に重症者ではなくなるモデル 
 →仮想都市モデルA-bed28と呼ぶことにします。
③重症者は35日間重症病床を使用し、36日目に重症者ではなくなるモデル 
 →仮想都市モデルA-bed35と呼ぶことにします。

また、元の「仮想都市モデルA-a15」については、重症病床の使用日数が14日間である点を強調するために改名して仮想都市モデルA-bed14と呼ぶことにします。こちらは呼び方が変わっただけで、計算式などは一切変わりません。

※ aの値は、今回の記事ではいずれのモデルでも a=0.15 という値を採用します。



〈計算例5〉4つの仮想都市モデルA-bed14、A-bed21、A-bed28、A-bed35を使って、それぞれ重症病床使用数を計算し比較してみます


《状況設定》
「1日の感染者数」が0人、10人、20人、・・・130人、150人、140人、・・・・20人、10人、0人という推移をした場合 の重症病床使用数を、4つのモデルを使ってシミュレーションすると・・・・


エクセルによる計算の過程・結果をまとめると 次の表のようになります。表の列B~列Fまでの数値は、前回の計算例3と全く同じですし、列Gに示されている「仮想都市モデルA-bed14」の計算結果も、モデルの呼び方を変更しただけなので、前回の記事の〈計算例3〉と全く同じ数値が並んでいるはずです。
列H、列I、列Jは、それぞれ列B~列Fまでの値を元に、A-bed21、A-bed28、A-bed35 のモデルで計算した結果を示しています。

新型コロナ調べ(第2回) 重症者が重症病床を使用する日数が長期化した場合の計算例


(表をクリックすると拡大されます)
この記事で使用しているモデルの具体的な計算手順に興味のある方は、こちらの表を拡大してご覧下さい


計算結果をグラフで示すと以下のようになります。

新型コロナ調べ(第2回) 重症者が重症病床を使用する日数が長期化した場合の計算例



《シミュレーション結果の説明》
「1日の感染者数」に0.15を乗じた値である「重症化しやすい感染者数」は、2020/1/2から徐々に増え、2020/1/16に22.5人でピークとなり、それ以降は徐々に減り、2020/1/31以降は0人となります。
重症化するのは「1日の感染者数」とカウントされてから7日後(例外なし)としているので、「新規の重症者」は2020/1/9になって初めて0.15人が計上され、その後は徐々に増え、2020/1/23にピーク(2.25人)となり、その後は徐々に減り、2020/2/7以降は0人となります。

「重症病床使用数」の各モデルの計算値(グラフの山の形)を比較すると

新型コロナ調べ(第2回) 重症者が重症病床を使用する日数が長期化した場合の計算例


報道ではしばしば、「感染者数が減っても重症者数はなかなか減らない」、「症状の重い人が増えて入院が長期化すると重症病床は逼迫しやすい」といったことが言われますが、こうして結果を比較してみるとよく分かりますね。

このシミュレーションのやり方だと、重症者の全員が14日間ベッドを使用するとすれば、2020/2/20には重症病床使用数が0に戻る計算になりますが、もし重症者の全員が35日間ベッドを使用するとすれば、重症病床使用数が0に戻るのは、2020/3/12という計算になります。「1日の感染者数」が0に戻る2020/1/31から数えて1ヶ月半近くを要するという話ですね。
また、重症病床使用数のピークの値を比べた結果、重症者の全員が14日間ベッドを使用するとすれば、最大でも24.15床あれば足りる計算になりますが、もしも重症者の全員が35日間ベッドを使用するとすれば、最大で33.75床(約1.4倍)必要になることが分かります。


モデルでは、重症者が重症病床を使用開始するタイミングは、感染者として発表された日から7日後(例外なし)としていますが、現実には、感染確認時点で重症に近い方もいるでしょうし、重症化の兆候が見られても受け入れ先病院が見つからないなどで重症病床使用開始が遅れる場合もあるとのことで、実際のタイミングは様々でしょう。また、重症病床を使用する日数も2週間程度で済む人もいれば、1ヶ月以上かかる人もいるはずですが、重症状態が長期化する割合がどれくらいかという正確な数字をつかむのは、ちょっと素人では手に負えません。自分のような一般人が、公の情報を手がかりに、現実の都市の重症者数の推移をイメージする際は、今回作成したグラフの4本の曲線がミックスされたような曲線を思い描けば、近似的にはOKなのかな、と思っています。
(シミュレーションによる計算結果と実際の重症者数がどれくらい一致するかという比較・検討は、何回か後の記事でまとめる予定です。)


《個人的な感想》
このグラフを作成したとき、「もしかして計算式の入力ミスとかがあったのかな??」と疑って何度もチェックしてしまいました。
医療とか数学や統計に詳しくない自分みたいな者の素朴な日常感覚からすると、なんとなくシミュレーションの数値にだまされているような、受け入れがたいような結果に どうしても見えてしまうんですよね・・・・

だって、黒い実線で描かれている1日毎の「新規の重症者数」のグラフだけ見てると、めちゃめちゃ低い山ですよね!?一番ピークの2020/1/23の数値でも2.25人に過ぎない。
それが一体どうして重症病床使用数が24.15(A-bed14の場合)とか、33.75(A-bed35の場合)とかの大きな数字にまで膨らんでしまうのか。感覚的にはどうも受け入れがたく感じてしまう・・・・・

でも、表やグラフを見ながら落ち着いて理屈を考えてみれば、一見小さく見える「新規の重症者数」の数値でも、何日も何日も積み重なっていく間に、10倍~15倍の数値にまで膨らんでしまうということなんですね。


だから重症病床の逼迫ということが、専門家の間でこれほど大きく取り上げられるわけですね、納得です。


感染者数の推移と重症者数の推移には時間的なズレが生じること、毎日伝えられる「新規の重症者数」と「重症病床の使用数」の違いは、なかなかテレビの解説を聞くだけではイメージが湧かないので、けっこうたくさんの人が「どうも専門家のシミュレーションって大げさに危機感を煽っているんじゃないか?」といった思いを抱いてしまうようです。医療関係者の抱く危機感が、政治家や一般の人に伝わりにくく、経済活動のアクセル・ブレーキや緊急事態宣言のタイミングも狂ってきてしまう原因のひとつは、「シミュレーションで示されるシナリオが日常感覚で受け入れにくいものだから」かもしれません。

でも出てきた数値をじ~っと眺めていると、どうやら計算ミスはなさそうです。これからはシミュレーションが提示するイメージをもっと信頼して、自分の日常感覚の方を少し疑った方がよいだろうと思いました。





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Posted by やまやま at 20:41│Comments(0)その他
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